根粒の内部には、感染細胞(バクテロイドの満たされた細胞)と非感染細胞(バクテロイドの見られない細胞)が存在する。根粒の特異な内部構造に注目して、感染細胞と非感染細胞が共生窒素固定代謝に果す役割について研究した。酵素処理を行った後、ナイロンメッシュとパーコールまたはショ糖を用いた密度勾配遠心法により、感染細胞と非感染細胞とを分けることができた。分かれた各細胞の酵素活性を調べた結果、キサンチン脱水素酵素の活性は感染細胞で強くみられ、ウリカーゼの活性は若い根粒を除いて非感染細胞でのみみられた。CO_2暗固定酵素の活性は非感染細胞で高かった。リンゴ酸脱水素酵素の活性は両方の細胞にあったが感染細胞の方が高かった。以上の酵素分布から、非感染細胞でCO_2暗固定でできたリンゴ酸が感染細胞に補給され、感染細胞でできた尿酸は非感染細胞へ運ばれ、そこでアラントインに変ると考えられる。 カルシウムと硼素の適量の施肥が根粒の窒素固定活性を高めることがわかった。感染細胞からミトコンドリアとバクテロイドを取出し、これに抽出したレグヘモグロビンを与えると低酸素分圧下でも呼吸を高めることができた。 硝酸塩施肥によって根粒の窒素固定が24時間内に抑制を受けることが明らかになった。この抑制は硝酸イオンが還元されて亜硝酸イオンが蓄積する速度と一致した。硝酸還元酵素を持たない根粒菌で根粒を作らせても硝酸イオンによる抑制はあらわれたので、植物の硝酸還元酵素によって作られる亜硝酸イオンがレグヘモグロビンと結合してニトロシルレグヘモグロビンになるとレグヘモグロビンの酸素運搬能は阻害された抽出したレグヘモグロビンに硝酸イオンを与えても光吸収カーブに変化は生じないが、亜硝酸イオンを与えると変化した。レグヘモグロビンと酸素との結合は拮抗的に阻害された。
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