研究概要 |
モデル化合物として, 抗炎症剤イブプロフェンを使用し,結晶のアイクロスフィア化とアモルアァス化を試みた. 晶析法として溶媒置換法を採用した. イブプロフェンとアクリル酸系ポリマーのエタノール溶液を水中に添加すると, コアセルベート様のエチノール溶液の液滴が形成された. 液滴内のエタノールは徐々に水中へ拡散し, 薬物とポリマーが析出し固化した. 即ち系がエマルションからサスペンションへ変化する. このプロセスを, エマルションー拡散法と名づけた. この時系を攪はんすると, ポリマーに薬物が分散したマイクロスフィアー粒子が得られることが判明した. このマイクロスフィアーは, 流動性や充てん性, 圧縮性に優れ, 粉体としての二次機能が著しく向上した. ポリマーの種類や添加濃度を変化させると, マイクロスフィアーからの薬物の放出がコントロールされることが判った. 腸溶性ポリマーを使用すると耐酸性に優れ, アルカリ領域で薬物放出が促進される, pH依存型放出制御マイクロスフィアーが得られた. 徐放タイプのポリアーを使用すると, 徐放性マイクロスフィアーが得られる. 薬物放出機構は拡散型で, ポリマーの添加量を増やすことによりその速度を抑えることができた. 本マイクロスフィアをビーグル犬に経口投与し, 対照の顆粒製剤と比較した所, 生物学的利用能の向上とともに, 最大血中濃度到達時間が延長し, 高エネルギー状態にあることが示された. 晶析溶媒として, エタノールージクロルメタンの混合溶媒を使用すると, ポリマー中に分散したイブプロフェンがアモルファス化することが判った. 前述のマイクロスフィアーよりもさらに高いエネルギー状態にあることが予想される. 今後の研究計画としては, 高エネルギーマイクロスフィア中の薬物の安定性や放出挙動等の定量化をめざす.
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