研究概要 |
レトロトランスポゾンーコピアはショウジョウバエの細胞内で動く遺伝子としての機能を持つと同時に, 細胞内に我々によって見い出されたレトロウイルス様粒子を形成する. このウイルス様粒子は逆転写酵素活性を持ち, この酵素によってコピアは遺伝子上で増巾や再配列を起すと考えている. このウイルス粒子内のコピアRNAを鋳型とする逆転写は, 従来のレトロウイルスのcDNA合成とは異なり, tRNA(fーMet tRNA)の3′末端からではなく, 3′末端が切断され, その上流がプライマーになることを我々は示した. これらの結果をふまえてまず初めに, この様なtRNA3′末端のRNAーRNAハイブリッドから遊離した部分を切り出す酵素が一般的なレトロウイルス中に存在するかどうか検討したところ酵素活性の一部として3′末端から切り出す酵素(エキソヌクレアーゼ活性かエンドヌクレアーゼ活性かは現在検討中)が存在することがわかり, この活性がコピアのウイルス様粒子中の逆転写酵素に特異的な性質でないことが示された. 次に, 3′末端が36塩基欠けたtRNAがプライマーになる場合, 36塩基が切り出されたfーMet tRNAの断片や, 36塩基の遊離したtRNA断片が細胞内やウイルス粒子内に存在する可能性が考えられる. この事を検索するため, MetーtRNA中の一部の塩基に相補的な合成ヌクレオチド(約17塩基)を作成して細胞内のtRNA画分がウイルス粒子内のtRNA画分とハイブリダイゼーションを行なった. その結果, 36塩基欠けたMetーtRNAや36塩基の断片RNAはいずれにも見い出すことが出来なかった. 現在, 細胞内での逆転写の中間体や環状DNAの検索を行いつつある.
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