レトラトランスポゾンcopiaの逆転写のメカニズムを研究すべく、3年間の研究を行った。その結果以下の知見が得られた 1.レトロウイルス様粒子内のコピアRNAを鋳型とする逆転写は従来のレトロウイルスのcDNA合成とは異なり、tRNA(コピアRNAの場合はf-met-tRNA)の3'末端が切断され、その上流がプライマ-となることが示されていたが、この様な3'末端を切断する酵素活性はレトロウイルスの逆転写酵素の活性の一部として存在することがわかり、この活性がコピアのレトロウイルス様粒子内の逆転写酵素に特異的な活性ではないことが示された。 2.プライマ-となるf-met-tRNAの欠失したと思われる3'末端36ヌクレオチドを合成し、これをプライマ-として、欠失したf-met-tRNAの存在を調べたが明確な結果が得られなかった 3.copiaを持つ細胞内の環状copiaDNAの存在を効率良く同定する目的で、又、2LTRと1LTRの構造や量比を調べるため酵素増幅法を用いた。この方法によって2LTR・1LTRのjunction部分を増幅して得ることができ、構造解析が可能になりつつある。 4.copiaは従来から細胞内で5kbと2kbのRNAが転写により生ずることが示されていた。このうち2kbは5kbRNAのスプライシングによって生ずること、また、この2kbRNAから生ずるタンパク(33Kダルトン)がレトロウイルス様粒子形成の総ての情報を持つことが示された。又この2kbRNAには、逆転写に必要なプライマ-の結合サイトや2本鎖DNA合成のシグナルサイトも保存されていることが示された。 5.逆転写によりcopiaDNAが形成されることをより強く解明するためcopiaを持たないショウジョウバエの培養細胞に5kb copiaを導入し、その細胞においてスプライシングによって生ずる2kb RNAから逆転写によって2kb DNAが形成されるかどうかを調べた。その結果、両端にLTRを持ち宿主の重複配列を持つ2kb DNAが形成されていること、又、本来のcopiaを持つ培養細胞系にも2kb DNAがあることがPCRで確認され、copiaが逆転写によって転移増幅していることがより強く示唆された。
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