62年度に単離したヒトおよびマウスのガラクトシルトランスフェラーゼ(β1-4galTase)をコードするfull-length CDNAの全塩基配列を決定し発表した。これを材料にヒト及びマウスのゲノムの遺伝子クローンを単離し、解析を行った。全長40kbに及ぶ遺伝子であることが判明し、エクソン、イントロンを決定した。イントロン配列がCDNA中に見出され、スプライシングをうける前の配列がmRNA中に発現されており、この機構が細胞の分化状態と関連して調節されている可能性を追求している。ゲノム遺伝子40kbの全塩基配列決定にはさらに時間がかかるのが、エクソン-イントロンのJunction部位は決定された。ゲノム遺伝子の調節領域を決定するため、その5'端をクローニングしまず塩基配列を決定した。現在、CAT遺伝子と組み換え、その発現を細胞の分化状態の違いにより検討している。 full-langth CDNAを発現系ベクターに組み換え、cos細胞にトランスフェクトすることにより、β1-4galTaseの活性発現を検出することに成功した。その基質特異性を決定することはきわめて興味深いので、現在、様々のアクセプター分子を用いて検討中である。酵母の分泌型ベクターにfull-length CDNAの膜結合部を欠失した配列を組み込み、分泌型酵素としての発現を試みている。 一次構造より推定された抗原部位の合成ペプチドを作成し、免疫することにより抗血清を得た。膜結合型酵素を検出する抗血清により各種組織の光顕レベル電顕レベルの免疫染色を行った。結果、従来より酵素活性により報告されている分布ときわめてよく一致した。さらに電顕にて精巣上体の検索の結果、ゴルジ膜に豊富に存在するのみならず細胞膜上にも存在することが確認された。従来より疑問視されてきた本酵素の細胞膜上での役割について今後この抗血清がきわめて有用な材料となろう。
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