研究概要 |
1.昭和62年度には「スコットランド啓蒙におけるルソ-」で、ケイムズ以下のスコットランドの啓蒙知識人のルソ-受容の実態とケイムズのルソ-(とりわけ『エミ-ル』)への強い関心を明らかにし、また「ジョン・ミラ-における『政治』と『科学』」で、ケイムズの弟子でもあるミラ-のスコットランドの改革への関与とその思想史的文脈を明らかにした。 2.昭和63年度には「スコットランド啓蒙におけるユ-トピアと改革--ケイムズ卿を中心として」と「ケイムズ卿におけるユ-トピアと改革」において、スコットランドの改革と近代化に縦横無尽の活躍をした啓蒙知識人としてのケイムズ卿の全貌を視野に入れて、改革へのケイムズの取り組みの特徴を、たゆみなき勤勉(インタストリ)の強調と様々な改良の実践にみいだした。また「ジョン・ミラ-とフランス革命」と「スコットランド啓蒙におけるフランス革命の一端」においては、18世紀末期のスコットランドの思想家たちのフランス革命にたいする多様な見解に光をあてた。 3.平成1年度には「アダム・スミスとジョン・ミラ---市民社会史の成立と自然法学の変容」において経済学という新しい学問が、法学、政治論、歴史叙述などといかなる親和と対立を刻みながら成立したかについて考察を深化し、アダム・スミスに代表される自由主義思想が意図と結果のねじれ、意図されざる結果の論理を歴史分析から抽出し、その理法の認識を基礎として新しい社会の理論として経済学を樹立したという解釈を行った。また「スコットランド啓蒙--最近の研究動向」では過去5年間の内外の研究動向を分析し、紹介した。 4.この3年間にScots Magazine,Annual Register,Statistical Accounts of Scotlandといった重要な資料を入手できたが、それらを利用した研究は現在継続中であり、逐次成果を発表していく予定である。来年度にはこの3年間の研究成果を含む書物『スコットランド啓蒙思想史研究』を刊行する予定である。
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