研究概要 |
本初年度は先ず電気生理実験用の装置を製作完成させた. これを用いて金魚網膜から単離培養した水平細胞を対象に行った類種類の実験の内容,主成果意義は概略以下の通りである. 1.電位依存性Ca透過性は完全には予活性化せず, 最大20pA程度の定常Ca電流(Ica)が残る. これをグルタミン酸前処理による1時間以下の脱分極を含む特別に工夫した実験で確認した. これによると最大毎秒20μMの〔Ca〕〓上昇となってしまい,なんらかのCa^<2+>排出機構の存在が必要となる. 2.Na→Li置換外液をベースで上記実験を行うとIcaは消出する. 低Na高K液で脱分極前処理してもIcaは残らない. Na^+が重要であり,NaーCa交換によるCa排出が示唆される. 低Naで交換は止まり〔Ca〕iが上昇して,Ca流入が阻害されると解釈出来る. 3.上記見解を次の実験で強化した. Naーfrolにすると膜電流は徐々に外向きに動き,最終到着レベルはCo^<2+>でIcaを阻害した場合と一致した. 4.ウワバインは膜電流に内向き変化を起こした. NaーK ATPase存在の証拠であり,3種のNa流入(TTX感受性成分,視細胞からの興奮性伝達物質によるシナプス電流,NaーCa交換で生じる成分)を打ち消すと考えられる. 以上,NaーCa交換とNaーKポナプの存在を立証したことにより,水平細胞内イオンホメオスタシスの基礎固めをした. さらに,上記実験から大容量の細胞内Ca貯蔵庫の存在を示唆するデータも得,目下カフェイン等を使ってこれを究明中である. これは予期しなかった展開であり,その重要性を考慮して当初計画にあった発光プローブによる〔Ca〕i測定より優先させて成果をあげることを急いでいる.
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