研究概要 |
植物病原菌の生産する宿主特異的毒素に関する研究を中心とし, 広く植物病原菌が宿主植物を選択する機構を化学的に明らかにすることを目的として以下の研究を展開してきた. 1.燕麦のVictoria blight病の病原菌であるHelminthosporium victoriaeの生産する宿主特異的毒素, HVー毒素に関する研究を行い, 主活性毒素のフォルミル基がアミノ基に置換されたHVー毒素Mの構造を明らかにすることに成功し, さらに他の微量成分に関して分離, 精製を進めている. これらの研究はHVー毒素の構造ー活性相関の解明に重要な知見を提供すると考えられる. 2.HMTー毒素, PMー毒素はトウモロコシのゴマ葉枯れ病の病原菌である. Helminthosporium maydis,raceTとPhyllosticta maydisによって生産される宿主特異的毒素であるが, これらの毒素の関連化合物を合成的に得ることにより構造ー活性相関の研究が進展している. HMTー関連物質13種類, PMー関連物質20数種類の合成に成功し活性中心の研究からコンフォメーション解析へと研究が展開されている. 3.柑橘類の一品種, Dancy tangerineに褐斑病を起す病原菌であるAlternariacitriの生産するACTGー毒素の構造を6種類明らかにしてきたが, さらに微量成分2種類の構造及び新規セスキテルペン一種類の構造を明らかにすることに成功した. さらに現在, 植物材料を育成することにより構造活性相関及び作用機構解明の研究を進めるべく準備している. 4.さらに他の植物病原菌の宿主選択機構解明に関する研究の一貫として稲のイモチ病菌培養条件を検討するとともに, 稲のファイトアレキシンとして構造解析を行ったオリザレキシン類の稲葉中における定量等を検討してきた. しかし現在のところ感染誘導物質の検出にはさらに一層の検討が必要な段階である.
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