研究概要 |
過去3年間の研究の経緯及び結果を以下に述べる。 目的:植物病原菌が生産する感染誘導物質として位置ずけれられる宿主特異的毒素を中心として広く植物病原菌が宿主植物を選択する機構を化学的、生化学的に明らかにすることを目的とする。 結果:1.燕麦のVictoria blight病の病原菌であるHelminthosporium victoriaeの生産する宿主特異的毒素HV-toxin Mの構造解析に次いでHV-toxin Mが主活性成分Victorin Cと同一物質であることを明らかにした。このほかにすでに報告されている化合物ではないと考えられる微量成分の精製を試みたが単離することは出来なかった。アミノ酸分析結果から構成アミノ酸の相違が考えられるが詳細については今後の研究にまたねばならない。 2.トウモロコシのゴマ葉枯病菌であるHelminthosporium maydis,race T及び黄色ゴマ葉枯病菌であるPhyllosticta maydisがそれぞれ生産するHMT-toxin関連化合物を31種合成し毒素の結果に基ずいてさらにその詳細な活性発現機構を検討する為にさらに8種類の新規関連化合物を合成して現在その詳細な活性の比較を行っている。 3.柑橘類の褐斑病の病原菌であるAlternaria citriの生産する宿主選択的毒素ACTG-toxinの微量成分及び新規セスキテルペン、dihydriosporogen AO-1の構造を明らかにするとともにACTG-toxinに関する構造と活性に関する知見を得る為の化学的変換を計画中である。 4.上記以外の病原菌としてPyricularia oryzaeとHelminthosporium maydis,race 0に感染誘導物質が存在する可能性を前提として、培養法及び活性の検出等を検討したが具体的成果は今後の研究に待つところが大きい。これらの成果を基にさらに深く完成機構の解明へと進展させるべく研究を継続している。
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