ポルフュリオスのSサゴ-ゲ-に対する12世紀以前に書かれた現存する未刊の合法釈を校訂することが本研究の目的であった。校部作業自体は実質的に完了していたので、本年度は主としてその出版にむけての準備に費された。なお、諸法釈の内の一部(Pari BN Cat.17813)は、Leicler下のJ.Dysが博士論文として本研究者とは独立に校訂をすすめていた旨、私信による連絡があったので、彼女の仕事にゆでることとした。残る諸法釈は、何分大部なものであるので、5つのグル-プに分けて出版準備をすすめている。(1)9世紀から11世紀までに書かれたもの4部。これについてはなおかなり検討の余地を残しているので、今後の研究課題として残したい。(2)11世紀のrealesの手になる最初期の法釈3部。これについてはGrammatica Speculativa叢書のeditors.K.Jacobi教授(Freiburg大)とC.H.Kneepkeve教授(Nijwegen大)が同叢書への受入れを正式に決定した旨、1990年3月20日附私信で通知があった。但し、序文および校訂本文の取扱いについて再検討すべき点を指摘してきたので、出版の実現までにはまだかなりの年月が必要だろう。(3)vocales(初期の唯名論者)の手によるもの4部。これはTraditio誌に発表される予定である。目下、序文の執筆が大部分完了した段階である、なお、vocalesをめぐる新しい知見は1989年度第38回中性哲学会でシンポジウムの提題として発表した。内容的にはTracliho説を発表予定のものと重なるが「中性思想研究32号」に掲載されよう。(4)12世紀中葉に書かれたもの4部。これについてはS.Ebbesen教授(コペンハ-ゲン大)を通して、デンマ-ク王立アカデミ-の出版物の一つとなる旨内諾を得ているが、具体的準備はすすんでいない。(5)その他5部。これについてはまだ発表の場が決定していない。以上のようなわけであるので、比較的近い将来に出版のみこまれる(3)を、とりあえず本研究の成果として提出することにしたい。
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