研究課題/領域番号 |
62510028
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
吉村 元雄 関西学院大学, 文学部, 教授 (70103124)
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研究分担者 |
永田 彰三 関西学院大学, 文学部, 助教授 (10164435)
畑 道也 関西学院大学, 文学部, 教授 (70098359)
磯 博 関西学院大学, 文学部, 教授 (00079609)
今井 清 関西学院大学, 文学部, 教授 (70079606)
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キーワード | 主題 / モティーフ / idee fixe / 調性の解体 / コラージュ・スタイル / 風俗画と肖像画 / 装飾文様 / 寓意性 |
研究概要 |
音楽において例えばソナタ形式の主題のようにモティーフの性格と構造が主題の性格を決定し、音楽の展開をも規定する場合があるが、19世紀の標題音楽には主題そのものの変形の手法が明確に現れてくる。ベルリオーズの幻想交響曲(Symphonie fantastique.op.14)では標題をもつ5つの楽章が一定の主題(固定楽想、idee fixe)の変形で統一される。しかし「主題」という観念は、今世紀における調性の解体とともに姿を消していく。そのことは演劇においてもある程度指摘できることであって、今世紀になって演劇が鑑賞されるべきものから体験されるべきものに立ち戻り、戯曲・演技・演出のそれぞれにおいて断片化、多面性をもつ対話、コラージュ・スタイルといった特長が現れ、テーマとモチーフの関連が不明確になる。 一方、美術においては主題とは描写対象をさす。時粧風俗を対象とする風俗画では当然対象の再現的表現が強く要求され、画家の内面性の自由な表出は幾分制約されよう。肖像画の場合は肖似性が問題になるため風俗画と同じことがいえるようであるが、肖像画では描かれる人物の精神性の表出が求められるため、その表現に画家の内的視覚性が大きな意味をもってくる。 工芸において「主題と表現」が問題となるのは絵画に近い装飾文様であろう。しかし例えば花や鳥を題材とする文様が純粋に装飾以外の何ものにも奉仕していないといえるのは近代以后のことであり、古来、文様の題材の背後には寓意が潜んでいることが多かった。その一方、工芸品のうちには材料そのものに主題が求められ、或いは材料を加工し器物を製作する工程から例えば木工芸における「木目」にみられるように材料の中に主題が見出されることがある。また縞、格子、亀甲、菱、立涌のように織る、編むといった工程から文様が生まれることもあるのである。
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