研究課題/領域番号 |
62510028
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
吉村 元雄 関西学院大学, 文学部, 教授 (70103124)
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研究分担者 |
長田 彰三 関西学院大学, 文学部, 助教授 (10164435)
畑 道也 関西学院大学, 文学部, 教授 (70098359)
磯 博 関西学院大学, 文学部, 教授 (00079609)
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キーワード | 芸術表現 / 主題 / モティ-フ / 文様 / 狩野派 / 近世初期風俗画 / 無主題 / 断片化 |
研究概要 |
歴史を通して示された芸術表現上の基本的な主題が時代、民族、社会等の芸術世界の構造上の諸契機に応じて表現上いかなる展開をとげるかを追求することに本研究の目的はあり、本年度において以下の点が明らかとなった。 1.材料の中に、あるいは技術ないしは製作工程において主題が見出されることのある木工芸、編み物、織物や、窯の内部で自然の力が作用して出来上った作品に主題が見出されるといった偶成的なあり方の一方で、工芸にみられる日本の文様の大半は具体的な主題をとり、例えば花や鳥を題材とする文様は、背後に社会的、思想的、宗教的、文学的寓意が秘められ、文様が純粋に装飾以外の何ものにも奉仕しなくなるのは近代以後のことである。 2.主題を等しくする豊国神社蔵狩野内膳筆豊国祭礼図展風一双と、徳川黎明会蔵の同名の一双を比較すると、庶民風俗の表現において狩野派画人は伝統画派としての矜持と権威者としての姿勢をくずすことが許されなかったのに対して、近世初期風俗画は慶長末から元和、寛永期にいたると町絵師を中心に主題を遊里、芝居で代表される浮世的世界に求めることによって近世的な人間像を十全に表現しうるようになった。しかしこの世界は狩野派にとってはもはや全くあずかり得ない世界であった。 3.楽曲を成長、発展させるモティ-フの集合体である主題によって形成されてきた西欧の音楽が第二次ヴィ-ン楽派の無調音楽において無主題的となったのと同じく現代演劇の特質をなすものも作品の断片化、多面性をもつ対話、コラ-ジュ・スタイルといった要素に加えて上演の自律性、言葉の解体が進み、プロットも構成の一要素となって作品と堅く結びつくことはなくなり、それを積重ねてイメ-ジやモチ-フを創出し、記憶と時間の不確定、繰返しの多用が思想、感情のリズムをつくる。
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