研究概要 |
本研究の目的は, 古典的条件づけとオペラント条件づけの関係について, その両者が混在しているとみられるキンギョのシャトルボックス中の嫌悪条件づけ事態における反応の移動軌跡の分析を通じて検討することにある. 本年度は, 古典的条件づけ事態と回避条件づけ事態の間の移行にともなって, 緩和量等がどのように変化するかを検討した. 被験体は体長約7cmのワキン4匹. それぞれは, AN→PN, AT→PN, PN→AN, PN→ATの各条件に配列された. ここで, Aは回避条件づけ, Pは古典的条件づけ, Tは反応による条件刺激の停止を, Nは不停止を表わす. PHASE-1,2とも10日間, 1日30試行, 試行間間隔は平均3分である. 位置の計測は条件刺激提示前10秒間, 提示開始から10秒間およびその後の10秒間の計30秒間にわたって1秒あたり5回行った. ただし, 計測システムの特性による細かな変動を除去するために, 1回の計測値としては, 20ms毎に5回計測した座標値の平均値を用いた. この座標値を素データとして移動量, 平均速度を求めた. この結果, 条件刺激提示開始から隣室への移動反応が生ずるまでの動きの量および平均速度には一貫した傾向は認められなかった. しかし隣室への移動反応の後の動きの量および平均速度は, 古典的条件づけ事態のほうが回避条件づけ事態よりも大きいことが示された. これは, キンギョがふたつの事態を反応の後に電気ショックが与えられるか否かという点で区別しているものと解釈される. 条件的刺激提示中の移動量・速度に差がみられなかった点についてはさらに移動の直線性・加速度などについても検討する必要があるものと思われる. さらに今後は, 古典的条件づけおよび回避条件づけ事態と罰事態との間の移行にともなう移動量・速度などの変化について検討する.
|