行動に及ぼすウルトラディアン・リズムの影響を検討するために、4つの方向から接近を試みた。(1)時間判断(2分間推定)及び線分の長さの判断(長さ20センチの水平ー垂直線描記と中点判断)、(2)言語課題(仮名、漢字マッチングテスト・記憶)と空間課題(心的回転)、(3)ワープロ入力課題とファミコンゲーム課題、(4)眠気の判断の4つである。(1)は知覚判断レベルでの影響を問題としている。行動変数には約90分のウルトラディアン変動が同定された。空間の異方性が脳波変数との交絡で認められた。水平方向の判断は判球間コヒーレンス(脳波の同期性)と対応関係を示し、垂直方向の判断は左右差指数と対応関係があることがわかった。(2)は認知レベルでの影響を問題としている。このレベルの課題処理に従来した場合は、ウルトラディアン変動は約160分の周期を示し、脳波変数もこれに近似した周期で変動する。10人の平均スペクトルを求めても、この160分のピークは平担化しないので優勢変動成分とみてよい。この周期はこれまで報告されたウルトラディアンリズムの周期としては最も長い。(3)は実務レベルの行動に影響がみられるかを問題にしている。実験室的な実験は単調で魅力に乏しい。これはウルトラディアンリズムの顕現化を促しているのではないかという疑問に答えるために計画された。ワープロ入力課題は成績の適正評価につまずきを起こし、現在のところリズムの存否を明確するに至っていない。ファミコン・ゲームの成績には約90分周期のリズムが存在することがわかった。脳波の左右差指数はゲーム中、著明な右半球活性を示しながらも約100分周期の変動を示した。コヒーレンスには全く周期変動がみれず、基礎実験の成績と著しく異なることが解った。(4)眠気を測定したデータを再整理すると、脳波の左右差指数は150〜200分の周期変動を示した。認知課題処理と近似した周期であり、160分前後のリズムは今後注目すべきである。
|