研究概要 |
学校ストレスが発達期の子どもの心身に大きな影響をおよぼしていることは登校拒否児の増加や毎年十万人以上の高校中退者の数値を見ても推測に難くない. 本研究はこれらの事実を重視し, 行動科学並びにストレス学的観点に立脚し, 学校ストレスの要因や派生する諸問題について調査研究した. 研究対象には県下の複数の公立高校の男女生徒約2000名を選び, 独自のアンケート調査, 質問紙法による健康調査, 並びに競争傾性・敵意性に関する調査を施行した. えられた粗データは大型電子計算機に入力し, 統計学的解析を行った. 研究結果の要約:1.ストレス徴候としての易疲労は全体の53.2%の高率を占め, しかも「健康でない」と考えている者に有意に高く認められた(P<0.005). 2.さらに, 易疲労と睡眠不足, 運動不足間に高い相関が認められ, 生理的次元の問題が注目された. 3.一方, 学習要因と精神的ストレスの関係についての解析を通して, 生徒の約65%が「勉強する意欲が湧かず悩んでいる」. 学習と関連して, 自分や他人の成績を非常に気にしすぎたり, こだわっている者が74.3%にも達した. 4.「疲れやすい」と「勉強意欲の悩み」(P<0.005), 「成績固執」(P<0.005)間には高い相関が認められた. 5.さらに, 疲れやすい生徒は勉強中不安になったり, 気が散りやすく, ながら勉強の頻度が有意に高い(P<0.001以下)ことも判明した. 5.健康調査表とのクロス分析の結果, 心身の不適応傾向を示す神経症領域の生徒は上記の諸問題が有意に高い頻度で出現し, しかも, 最終学年次に増大した. 6.受験指向性の高い高校とそうでない高校では, 心身の不適応徴候や問題となる行動は前者が学年の推移と共に有意に増加することが判明し, 受験ストレスとの高い相関を示唆した. 今後はこれらの基礎的調査結果をふまえて, すでに収集したデータから, 競争傾性および敵意性尺度のスコア化を進め, 相互の関連性や国際比較を行い, 問題の解決を目指す.
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