本研究の目的はPerfettiの verbal efficiency theory が日本語および外国語として学んだヨ-ロッパ語の場合にあてはまるか否かを検討することである。具体的には、被験者のある言語の読解力がその言語の単語の音読潜時によって影響されるかを調べた。 第1部では4つの実験を行なって、日本語における読解力と単語の音読潜時の関連を検討した。小学校5年生の読解上位群は、平仮名で表記した単語・漢字で表した単語のいずれの音読潜時についても下位群よら短かった。疑似単語の音読潜時における両群の差は実在の単語における差より大きくはなかった(実験1ー3)。大学生では、読解力の上位群、下位群の音読潜時の差は平仮名、漢字のいずれでも見られなかった。(実験4;この結果は実験5でも確認された。)第2部では、大学生の英語、仏語、独語についてこの関連を検討するため2つの実験を行なった。英語の読解力と英語の単語の音読潜時の間には関連が見られた(実験5、6)。仏語、独語では両者に有意な相関は見られなかった(実験6)。 単語の読み取りが自動化していないと読解がそこなわれるという仮説は、小学校5年生では、表記法(平仮名か漢字か)にかかわらず支持された。大学生では日本語の場合には読み取りが一様に自動化しているため、この仮説はあてはまらなかったが、英語の場合には支持された。単語の音読潜時は主としてdecoding技能の習熱に依存するという仮説は、日本語の場合にはあてはまらなかった。これは、平仮名のdecoding 技能の習熱は英語よりやさしく、小学校5年生の上位群ではすでに大学生と同じ水準にまで達しているためと、漢字の読みにはdecodingの一般的規則がなく、英語の場合とは習熱の過程が異なるためであろう。
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