研究概要 |
1.視覚的手がかりを豊富にした放射状迷路およびオープン・フィルドテストに対する尾状核損傷の効果について検討した. 結果によれば, Masuda & Iwasaki(1984)と同様に, 放射状迷路課題の保持が阻害された. オープン・フィールドテストでは, 尾状核損傷ラットの立ち上がり数にも通過区画数にも, 手術前と比較して有意な増加は認められなかった. 2.1.の結果について, さらに詳しく検討するため, 異なる照明条件(1500, 200, 30lux)および, 眼球摘出を行ったラットで, 尾状核損傷の放射状迷路課題の保持に及ぼす効果について検討した. 結果によれば, いずれの条件においても, 尾状核損傷ラットでは偽手術群と比較して, 課題の保持に阻害が認められた. 3.十字型迷路を用いた場所課題と放射状迷路における左右弁別課題に及ぼす尾状核損傷の効果について検討した. 尾状核のいずれの部位の損傷によっても, 場所課題には阻害効果は認められなかった. 左右弁別課題では, 放射状迷路課題に阻害効果を及した尾状核前頭部の損傷は課題の習得を阻害しなかったが, 放射状迷路課題の保持には阻害効果を及さなかった尾状核後腹部に対する損傷は課題の習得に阻害をもたらした. 4.放射状迷路課題の遂行には, 参照記憶と作業記憶のいずれもが, 必要であるとされている. 1.2.に示したように尾状核の損傷により放射状迷路課題は阻害された. しかし, 参照記憶のみで遂行が可能であると考えられる十字型迷路を用いた場所学習課題には尾状核損傷による阻害効果は認められなかった. そこで, 尾状核が作業記憶に関連しているのかどうか検討するために典型的な作業記憶課題である遅延見本課題の保持に及ぼす尾状核損傷の効果について検討するため, 現在, 実験中である.
|