尾状核が、作業記憶に関連しているかどうか検討するために、典型的な作業記憶課題である遅延見本合わせ反応に及ぼす尾状核損傷の効果について検討した。 ウイスター今道系雄ラット26匹に、T迷路を用いてあらかじめ遅延見本合わせ課題を習得させた。ラットが1日の6試行中5試行以上、ランダムに呈示される見本走行と同じ選択肢を選択することを5日間連続することをもって、学習基準に達したものとみなした。 学習基準に達したラットについては、その後10日間、見本走行と選択走行との間に5秒、20秒、80秒、320秒、1280秒の時間的遅延を設けて遅延訓練を行なった。 遅延訓練が終了したラットに対しては、麻酔下で、尾状核の前頭部あるいは尾状核の後部の損傷、あるいは偽手術を行なった。その後、回復期をおき、8日後から、遅延見本課題の遂行を12日間、テストした。 結果によれば、各群とも遅延時間の延長とともに正選択率が低下した。とくに、尾状核損傷と中隔損傷とを合わせ持つラットでは、成績が著しく低下した。また、尾状核の前頭部損傷群にも、偽手術群と比較して、成績の低下が認められた。 したがって、尾状核前頭部は、遅延見本合わせに必要な作業記憶に関与していると考えられる。
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