研究概要 |
対人関係が「道具的・手段的」関係と「自己完結的」関係という2つの側面から捉えられることは, 多くの研究のほぼ一致して認めるところである. Shaverh(1983)は, この2次元に相当する対人関係の欠如が「孤抵感」の発生に関係するとして, この2次元を社会的資産(social provision)と呼ぶ. 彼らはこの2次元を直交するものと仮定したが, 永田(1972)は機能としてはこの両者は矛盾する関係にあること, しかし発生過程からみると相互助長的な関係にあると考えられること(永田, 1987)を理論的に仮定した. この研究は, 上記の2つの仮説の妥当性を検証することを目的としている. 家族関係, 職場の人間関係, 趣味を媒介とする関係, 自発的な社会活動を契機とする関係, 学校における学習場面での人間関係, その他同一の個人をとりまく広い範囲の人間関係について「道具的・手段的」関係と「自己完結的」関係の強さを測定するための質問紙の構成が試みられた. これらの質問紙を集団的に, あるいは郵送法で実施したところ次のような結果が得られた. 1.数度にわたる質問紙の改訂の結果, 信頼性のある測定方法が見出されたこと. 2.「道具低・手段的」関係の強さと「自己完結的」関係の強さとは全体として高い相伴関係がみられること, しかし, 家族関係においては一部に一方の次元のみの高い関係がみられ, これが何を意味するかの検討が必要であることが示唆されたこと. なお, 今年度に回収された社会人, 主婦の資料は少数(86名)であるため上記の結果は, 大学生の資料(240名)に負うところが多いため, 昭和63年度には社会人の資料の追加が予定されている. この他に実験研究のモデルが検定されている.
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