従来の研究によると、STROOP干渉量の大きい漢字に逆STROOP現象が見られ、STROOP干渉量の少ないひらがなやカタカナに逆STROOP現象が見られないが、この事実は、READING SPEEDが遅いほど、色名反応と競合しないので、STROOP効果が少なくなり、また、文字呼称条件の場合は、文字反応が遅いほど、色名反応が文字反応を妨害するため、逆STROOP干渉量は多くなのとするDunbarらの仮説からの予測に反している。この観点から、Dunbarの用いた逆転文字の様な人工の文字を用いず、自然文字である漢字、カタカナ、ローマ字を用いて、彼の仮説を検討した。 集団式STROOP検査を用いて、STROOP刺激と色をmatchingする方法で干渉量を測定した。被験者は25名。文字反応条件では、黒文字の漢字、カタカナ、ローマ字の順で反応数が少なくなり、すべての文字で逆STROOP現象が生じた。言語反応にくらべて干渉量は若干減少したが、漢字とカタカナの相対的位置に変化はなかった。 色反応条件では、従来の言語反応にくらべて、色反応の干渉量は減少した。カタカナだけが統制条件の反応数との間に有意差が見られ、STROOP減少が生じた。漢字とカタカナの相対的干渉量は逆転した。このように、STROOP効果、逆STROOP効果のいずれも、漢字だけがDunbarの仮説に反する結果を示した。 反応競合仮説に立脚したDunbarらの仮説に反する事実は、漢字における表記形態仮説の有効性を示唆しているかも知れない。
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