本研究は、 「意識されない知覚」 や 「意識されない記憶」 に関する生理心理学的メカニズムについて文献的に調べたものである。 視覚一次野の損傷を湿気た患者は、ものがあるは意識出来ないにもかかわらず、テスト法によっては、何らかの知覚をしている事が示されている。これが、 「見えない知覚」 Blind sightである。これは上丘を中心とした第2視覚系の働きによって可能になると考えられている。 閾下知覚とは、閾下で提示され、意識されない刺激も、生体に何らかの影響を及ぼす現象を言う。閾下刺激が意識にのぼらないのは、刺激が弱くて網葉体〓活系の活性を十分にあげないためであると考えられている。閾下刺激に対しても誘発電位は得られるが、それは一次成分からのみなり、二次成分は刺激が意識される強さになった時に表れる。 分離脳の研究では、右脳と左脳が別々の意識を持ちうる事、そして右脳は言葉を持たないので、その活動内容は意識に登らない事、こらに右脳の活動によって生じた行為の原因については、左脳は推測するしか方法がない事などが明らかにされている。なお多重人格や催眠についても 「意識されない記憶」 という観点から興味ある事例が数多く報告されているが、その生理心理学的メカニズムについてはほとんど明らかになっていない。 海馬を中心にした脳損傷により健忘症患者は、新しい物事を覚える事が出来なくなる。しかしこうした健忘症患者も、知覚学習、運動学習、古典的条件づけなどの 「手続き的記憶」 については、その学習経験の意識なしに、成立が可能である事がしられている。それ故記憶には少ないとも2種類のメカニズムがあると考えられる。 なお正常人においても、プライミング効果は、プライム刺激が意識されない場合でも起こる事例が報告されている。
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