実験には、実験I(昭和62)で使用したものから「輪郭のみ」を除いた6種の線画を用いた。被験者には画面の線画を見ているときの自分の気持ちを、sentographで表出するように教示した。線画は、各3回ずつ計18回提示した。その他の手続きは実験Iと同じである。課題終了後に、生起した感情の強度と表出の満足度について自己評定を求めた。得られた知見は、実験Iと同様、各線画に対する3回分の波形(垂直成分)を線画ごとにまとめた。各3回分の平均波形について実験Iと同じ各測度を算出し、Friedmanテストを行って所、持続時間(X^2r=14.50)と圧力最大値(X^2r=21.39)に有意差(P<.05)がみられた。 総括 今回のような実験状況におけるSentogram波形は、62年度の研究成果と比べて全体的に短く、感情間で互いに類似したものであった。しかしながら、被験者に表出を要請しない弁別課題においても表情図の効果が見られたことは、sentographを用いることで被験者が意識しないうちに感情の測定が可能であることを示唆する。また、非表情線画では「無感情」、「喜び」に近い波形が得られることがわかった。Sentogram波形で最も特徴的なのは、持続時間の長い「悲しみ」と圧力最大値の強い「怒り」であると言える。
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