われわれは、表情線画と非表情線画を混ぜた刺激を被験者(女性)にランダムに提示し、要求特性が比較的減じられた条件下におけるセントグラムを検討した。セントグラムは、M.Clynesが考案し製作したセントグラフによって測定した。第1実験では、被験者の利き手第3指から装置の感圧部に与えられる圧変化を測定した。提示刺激は、「怒り」「喜び」「悲しみ」「無感情」を表す表情画に加えて、非表情画として顔の輪郭内に「十字」と「楕円」を描いたものおよび、顔の「輪郭のみ」を用いた。いずれもコンピュ-タグラフィックスで作成し、14インチのモニタ-に提示した。被験者は提示された図形の輪郭の楕円内に何か描いてある場合にのみセントグラフのボタンを押すという簡単な弁別課題を行った。一つの線画の提示時間は4秒間で刺激間間隔は2〜4秒である。結果は、「輪郭」を除く各線画の提示時間から3秒間を計測の対象とし、線画ごとにまとめた。各線画におけるsentogram波形の比較のため各3回分の波形の反応開始時点を一致させて平均し、(1)反応開始から圧力最大値までの時間、(2)反応開始から終了までの持続時間、(3)圧力最大値の4測度についてFriedmanテストを行ったところ、持続時間と圧力最大値にのみ有意差がみられた。符号検定の結果、「悲しみ」の持続時間は「十字」「喜び」よりも長く、「怒り」の圧力最大値は「十字」、「無感情」、「喜び」、「悲しみ」より強いことがわかった。第2実験では、実験Iで使用したものから「輪郭のみ」を除いた6種の線画を被験者に提示し、見ているときの自分の気持ちをセントグラフで表出すように教示した。結果は、持続時間と圧力最大値にのみ有意差がみられた。
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