研究概要 |
今年度は, つぎの3つの研究を行った. 第一に, 広島市に設置されている裁判外紛争処理機関の実態にかんする聴き取り調査. 第二に, 広島弁護士会所属の220名の弁護士に対するアンケート調査. 第三に, 広島市在住の160名の司法書士に対するアンケート調査. 裁判外紛争処理機関には各種のものがあるが, 今年度はその中でも最も市民に身近な市民相談所の利用状況について調査を行った. その結果, 最近の社会情勢を反映して, 土地問題を中心とした紛争が増加する一方で, 離婚による財産分与の問題や遺産相続をめぐる問題など, 財産にかかわる問題が多くなってきている. しかし, 市民相談の窓口を契機として, 弁護士アクセスが導かれるかというとかならずしもそうではなく, 問題の処理も「窓口」レベェルにとどまっている現状にある. 全体的にみて, 市民相談所の利用者は階層的には下層に属するものが多く, 経済的な要因が弁護士アクセスの1つの阻害要因とみられる. この点は, 来年度に予定されている市民調査によって究明されると考える. 弁護士調査は, 会全体の回収率約60%, そして広島地区だけでいえば約65%であり, 専門職調査としてはまず成功といえる. これも調査員による訪問回収の方法をとったからである. 具体的な成果としては, 弁護士業務の特徴や業務を支える生活意識の特徴が詳細に把握されたことである. たとえば, 弁護士においても, 一般には訴訟業務が中心にはなっているが, 裁判の遅延や経済的理由から, 訴訟外処理への志向は強くなっている. また生活意識の面では, 全体に, 社会奉仕姿勢や仕事への生きがい感の強さがみられるが, 世代別には大きな落差があり, 弁護士像の変容がみてとられる. 最後に, 司法書士調査は回収率も低く, 現在フオローせざるえない現状である. 集計等は3月末になる.
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