研究概要 |
本研究は, ネットワークに関する理論的基礎研究, 武蔵野市の市民運動のキー・パーソンから見た運動のネットワーク形成, 郵送調査による武蔵野市内の運動体の実態調査, その内の主だった運動体のリーダーに対する面接調査という4つの部分から成り立っている. 先ず62年7月までは理論的基礎研究にあて, ネットワーキングとは, 草の根運動を中心とした下からの「新しい社会運動」を指すべきであることを明らかにした. 続いてコミュニティ・センターを利用している団体をリスト・アップし, 武蔵野市における市民運動のキー・パーソンを定め, インタビューを行った. そこから彼らのネットワーキング図を作ると共に, 武蔵野市の市民運動団体を整理し, 12月には活動的なグループに対して彼らの活動の実態を把握するための郵送調査を行った. その反応を踏まえて, 調査会社に依頼して, 主要な運動体のリーダーに対する面接調査を63年の1月から2月にかけて行った. これらの結果, 武蔵野市は対外的には市民意識や制度の面で先進的だと思われているが, 旧来のムラ的側面を市民活動の中に多く残していること, 運動のリーダーたちが固定化する傾向が見られること, 運動の担い手が婦人(専業主婦)と老人(停年退職者)に片寄っていること, 行政はホンネでは市民運動を胡散臭く思っていることなど否定的な側面も数多く存在することがわかった. しかし一方で, 高学歴で(63年で大卒は男性の51%, 女性の18%)移動の激しい(転勤族が多い)市民層の存在は, グローバルな世界の動きに敏感でしかも地域で活動するという新しいタイプの運動のリーダーを生み出している. 彼らは年齢的には全共闘世代に多い. また運動体どうしが, 共通の目標に気付き始め, 情報の交換から共同行動, さらには恒常的なネットワーク形成という方向に進みつつあるということも伺える. 武蔵野市における市民運動は今後もその展開が大いに注目されよう.
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