本研究は、精神障害者福祉の確立のための基礎研究として、主に、地域ケア・システムを体系付けることが研究の目的である。研究方法は、社会福祉の調査研究と事例研究とに分けて(1)居住システムの構想では救護施設全国実態調査(2)地域作業所を地域のコアとするシステムの構想では神奈川県内の作業所調査(主に、利用者実態調査)(3)当事者支援システムとしての当事者組織調査(4)就労援助システムとしての職親調査(5)住民による支援システムとしてのボランティア活動調査とその育成事例分析等を総合的に検討する方法をとった。なお、各々の調査研究は協力団体との研究協力の方式によっている。 研究結果を研究方法に即して述べると【○!1】救援施設では精神障害者に入所率が高く医療・看護と個別援助の強化を必要とする【○!2】地域作業所では利用者の地域生活促進のために多様な機能が求められ援助者の人材確保と運営基盤の確立が急務である【○!3】就労では職親制度が鍵システムとなり障害者の就労援助機能を高めるための制度強化を要する【○!4】患者会では当事者相互の支援と交流機能が期待され当事者組織への支援ネットワ-クが重要である【○!5】住民による地域のネットワ-キングの主体者である精神保健ボランティアの機能はより重要であり地域の諸活動をつなぐ役割が期待されることなどが導き出せた。 現在の法・制度のシステムを危急に改善すべき点は、障害者の生活条件の確立とともに、自己決定の充分なる保障と社会参加の機会を促進するための諸条件を整えることである。その場合、障害者が地域社会での生活を成立させるための条件を整えて地域ケア・システムを障害者の地域生活関係の諸場面での相互作用を通じて同じ住民としてサポ-ト(支持・支援)されるネットワ-キングの形成を促すことが最重要となる。以上をふまえて、地域ケアシステムの基本的枠組の体系を構想した試案を提示することができた。
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