本年度の研究として第一にあげるべきことは、大阪産業大学助教授木村英二氏とともに十回にわたっておこなったB.ブレヒト、およびV.ベンヤミンの知識人論についての研究会である。これによって、ドイツ知識人の両義性についての貴重な知見がえられた。 次いで本年度の中心的課題であった「閉鎖理論」については、とくにP.ブルデュー.F.パーキン.R.コリンズ.R.マーフィーの諸説の検討がおこなわれた。「閉鎖理論」に注目したのは、「知の資本」の二つの機能、つまり(1)経済的機能と(2)政治的材能を媒介とする有用な理論装置と考えたからであるが、これについては、裏面に記した追手門学院大学文学部紀要第22号に「〈知の資本〉と閉鎖理論」としてまとめた。 本年度に購入した図書は19世紀から20世紀中盤にかけてのアメリカ合衆国における社会主義党派およびアナーキズム党派の材関誌であるが、これらを収集した理由はバクーニンに影響された「社会主義者」たちの思想的系譜はヨーロッパよりもむしろアメリカ合衆国に蓄積され、今日のネオ・コンサーヴァティヴという知識人に大きな影響を与えたと考えているからである。 ドイツ知識人、ネオ・コンサーヴァティヴなど個別的な「知の資本論」者の考察は数年の期間ののちにまとめられるはずである。
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