研究概要 |
本研究は昭和62年度において, 大学生と大学教員の双方に対して大学の「よい授業」についてのアンケート調査を計画し, その二つをともに実施することができた. 二つのアンケートはいずれも昭和62年6〜7月に実施した. その第一のアンケート調査は, 大学生3184名を対象としたものである. この調査目的は, 学生文化と「よい授業」の関連性を検討することにあった. 第二の調査は, 全国の大学教員748名に対する調査である. この調査目的は, 大学教員の大学教育観を探ることにあった. そして以上二つの調査結果から, 学生のもっている「よい授業」観と教員のそれを比較考察した. 調査結果をまとめると次の通りである. 学生調査では, 以下の三点が明らかになった. 第一に, 学生文化は主体的学習性と授業への順応性により特徴づけられる. 第二に, 「よい授業」の構成因子として「学生への配慮」「学習内容の個性化」「学習内容の標準化」「学習への動機づけ」の四因子が抽出された. 第三に, 学生文化と「よい授業」の関連において, 非主体的学習型学生は「学習内容の個性化」「学習への動機づけ」, 授業離脱型学生は「学習への動機づけ」, 授業順応型学生は「学生への配慮」の各因子を高く評価している. 教員調査では, 次の三点が明らかになった. 第一に, 大学教育観は年齢・設置者・専攻領域による違いが大きい. 第二に, 教員の理想としては教育よりも研究に多くの時間を費やしたい. 第三に, 講義特性は学部・専攻領域・大学院の有無による違いが大きい. 以上二つの調査結果をもとにして, 学生と教員の双方が考えている「よい授業」の構成因子を検討した. その結果, 「学生への配慮」因子と「学習内容の個性化」因子が一致していた.
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