研究概要 |
治療教育プログラム作成の基礎的資料の収集を目的として, 本年度は, 教室場面において「注意が集中できにくい子」の諸特徴を把握し, 「問題の児童」の援助すべき側面を明かにしようと試みて, 以下の質問紙調査と実験的検査と授業場面での行動観察を実施した. 1.小学校の現場教師を対象とする調査:約100学級「注意が集中できにくい子・集中力のある子」各100名づつの調査から, 上述の事柄と彼らに対する教師の認知の実態を把握しようとした. この調査と分析から, (1)「注意が集中できにくい」と教師が把握している児童は, 3725名中484名, 約13%いること, (2)注意の集中には, 課題達成, 情緒の安定, 活動性(集中), 持続, 浮動の5つの側面があること, (3)「注意の集中できにくい子」は, 持続と課題達成の面で弱点を持っていること, (4)教師は「注意の集中できない子」について, 「落ち着きのない」タイプと「ぼんやりしている」タイプの2つがあると捉えていることなど, が見いだされた. 2.小学校児童を対象とする実験的検査:小規模校・大規模校それぞれ250名づつ計500名の資料から, (1)意志的調整, 判断時間, 衝動的傾向, 見通し, 比較照合などと教師の捉えた「注意集中」の測度と関連していること, (2)これらは, 小学校高学年期になると児童自身が自覚していることなど, が示された. 3.小学校児童を対象とする授業時間中の行動観察:「注意が集中できにくい子」の行動のVTR記録の分析(現在進行中)から, (1)小学校低学年期と高学年期では, その現象形態が異なり, 低学年期では行動上の問題が, 高学年期では内的調整の問題がそれぞれ重要であること, (2)20名規模の学級では, 問題行動を示しつつも授業には参加していることなど, が示された. 次年度の中心的課題は, 「問題の児童」の援助過程の1年間に渡る追跡的検討と教育プログラム作成である.
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