前年度に引続き、小学校児童を対象にして、授業場面における精神的活動の自己調整に関わる問題、主として「注意が集中できにくい」児童の諸特徴の把握と彼らの問題行動の克服を課題として、研究を継続・発展させた。 1.自己調整の発達について文献的検討を行い、小学校児童におけるこの領域の占める位置と展望を示した。 2.前年度の資料を再分析し、(1)「注意が集中できにくい」の4側面(目的意識・情緒的安定・集中・持続)と、「集中力がある」の3側面(持続・目的意識・安定性)と問題の児童の弱点、および(2)教師の評定において、小学校児童が示す作業の「ていねいさ」が占める位置の大きさなど、を明らかにした。 3.VTR記録にもとづき、教室場面における「注意が集中できにくい児童」の行動特徴を分析し、低・高学年間の発達的変化(外的行動における問題から内的調整における問題へ)を明らかにした。 4.「注意の集中」の高低2群に、いくつかの実験を実施した。現在実験資料の分析を継続している。 5.小学校児童期においては、(1)一般にいわれる「注意が集中できにくい児童」のすべてが問題の児童であるかどうかという再吟味が必要であること、(2)児童中期における発達的変化を充分把握すること、(3)その上にたって、真の「問題児童」については、安易に短期的解決を強制するのではなく、学校内外の諸要因を考慮にいれた、長期的な「治療教育プログラム」を作成することが求められていることなど、が抽き出された。 6.2年間にわたって行ってきた、いくつかの調査結果と文献的検討について、その成果を公表した。
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