小学校児童を対象にして、授業場面における精神的活動の自己調整に関わる問題、主として「注意が集中できにくい」児童の諸特微の把握と彼らの問題行動の克服を課題として実施された。1.現場教師による回答からは、(1)とくに「注意が集中できにくい」と診断される児童が10%以上おり、そのほとんどが男児であること、(2)「注意が集中できにくい」には、A.目的意織、B.情緒的安定、C.集中、およびD.持続の4つの側面が区分され、「問題」の児童においては、とくに「持続」と「目的意織」に弱点を持っていること、(3)「目的意織」は「学習意欲」・「対人関係」・「自己信頼感」と、「持続」や「情緒的安定」は対人関係と、「集中」は「学習意欲」・「スポーツ・クラブ活動」と、それぞれ相対的に高い相関が認められることなど、が明らかにされた。2.児童による課題解決作業からは、(1)課題解決の反応数すなわち「成績」は、教師による「注意の集中」評定や児童の自己評定とそれほど関係しないが、(2)「ていねいさ」という作業特徴は、教師や児童自身のそれと比較的高い相関が認められ、(3)教師の「注意の集中」評定と高学年児童の自己評定の間にも、相関が示された。3.授業時間中の「注意の集中ができにくい」児童の行動分析から、(1)低学年期では、具体的な行動上の問題が、(2)高学年期では、内的調整の問題が、それぞれ重要であることが示唆された。4.「注意の集中」高低2群の教室場面での心拍記録や継次処理などの実験資料は、現在分析中である。5.教室場面で教師が把握している「注意が集中できにくい」児童の全部が必ずしも「問題」の児童ではないことが示唆され、形式的でない真の「問題」の児童を把握した上で、短期的でない、学校内外のさまざまな要因に配慮した「治療教育プログラム」を構策する必要が示された。6.自己調整の文献的検討も行い、全体の成果も公表した。
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