研究概要 |
1.カリフォルニア大学バンクロフト図書館から入手した19世紀末のカリフォルニアの無償幼稚園運動ならびに幼稚園教員養成学校関係の資料によって, クーパー夫人を中心とした無償幼稚園運動の特色として, 性格形成, 犯罪予防, 基礎的実業教育の3点がみられ, 米国内のみならず, 世界各国から, とりわけ日本, ニュージーランド, オーストラリアなどの環太平洋地域から問い合わせの手紙が多くあったことが確認できた. 2.そして, カリフォルニアの無償幼稚園教員の養成については, ウィギン夫人を中心にシルバーストリート無償幼稚園での実習を重視したコースが組織され, 多くの学生が在籍し, 太平洋岸の無償幼稚園の発展に貢献したが, 無償幼稚園の意義を犯罪予防や実業教育の点から強調しないで, あくまで地域に根さした幼児の教育, 発達の場として把握していたことが注目された. 3.このカリフォルニア幼稚園教員養成学校で森島峰が学んでいたことが資料の上から確認され, 森島がこの学校で受けた教育と後に森島が設立者のひとりとなって東京に設けられた二葉幼稚園の教育を細かく比較していくと, 両者が大変に類似していることが判明し, サンフランシスコの無償幼稚園運動の日本への影響が認められた. 4.サンフランシスコの無償幼稚園運動はニュージーランドへも影響を与えたのが, 当時のニュージーランドのダニーデンの新聞, ニューヨークのコーネル大学所蔵の書簡類などによって, ダニーデンの新聞編集者コーエンがクーパー夫人と密接な連絡をとっていたことが分かり, ダニーデンへの導入の経路が判明できた. 5.今後の課題は, オーストラリアその他の環太平洋地域に与えたカリフォルニアの影響を調べてみることである.
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