研究概要 |
1.1880年代から90年代にかけて、米国のカリフォルニアでは、犯罪予防や実業教育を目ざして、サラ・クーパー夫人やケイト・ウィギン夫人を中心に無償幼稚園運動が活発に展開された。このカリフォルニアの無償幼稚園運動は,自由主義的キリスト者が支援していたものだが、ニュージーランドやオーストラリア、日本、カナダ等へ影響を与えた。 2.とりわけニュージーランドへは強い影響を与えた。カリフォルニアのサンフランシスコとニュージーランドのダニーデンとの間に、社会経済的、宗教的な類似性がみられたためであった。 3.オーストラリアのシドニーでは、カリフォルニアの無償幼稚園運動の影響を受けて、19世紀末に無償幼稚園運動が開始されたが、草創期にはシカゴの進歩主義的な教育運動の影響を受けたために、形式的フレーベル主義の弊害から早目に脱却した。こうしたシドニーの動きは、オーストラリア国内ならびにニュージーランド等に影響を与えた。 4.1900年に開園された東京の二葉幼稚園の設立者のひとり森島峰は、1891年から92年にかけてカリフォルニア幼稚園練習学校に学び、実習重視の幼稚園教員養成を受けていた。そのため、二葉幼稚園の教育目的や運営方法等はカリフォルニアの無償幼稚園と類似していた。これは、また、寄付による運営を可能としたキリスト教的土壌がそれまでに日本にできていたことを示すものであった。 5.米国の無償幼稚園が各地で次第に公立化していくなかで、無償幼稚園を支えていたキリスト者は外国に伝道目的で幼稚園を開設する努力を強めていった。日本や中国、韓国等で設立されたキリスト教系幼稚園がそれである。こうしたキリスト教系幼稚園は、その後、環太平洋地域の幼稚園教育の発展に少なからず貢献していった。
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