1.ライヒヴァインの教育思想と、これにもとづく彼の実践をもっとも具体的に知ることのできる「創作する生徒たち」を完訳し、その抄訳(第1章及び第2章の主要部分)を刊行することになった。出版は本年4月中旬になる。翻訳部分は同書の第2部に収録してある。 2.彼の生涯と思想を、同書の第1部に纏めたが、全体的に考察するとライヒヴァインの教育活動は、やはり青年期の教育、とりわけ青年労働者の教育を中心に据えて考察する必要があることに気付いた。しかしながら、この領域での彼の活動を支えた思想や理論は、著作の形では公表されていないから、逆推論の方法を選ぶしかないこともまた事実である。この困難を克服するのが今後の課題のひとつである。 3.この点で同書の共著者、W.ウィルヘルムが扱ったF.クラットの思想は貴重な手がかりとなるように思われる。クラットの青年及び成人教育の領域における活動と、これを支えた思想にライヒヴァインは深く共鳴していたからである。人生における勤労と休息、動と静のリズムに注目し、とりわけ余暇時間の積極的な意味づけを考えたクラットの影響は、ライヒヴァインが考察したティーフェンゼーのカリキュラムからもよみとることができる。 4.東西ドイツにおけるライヒヴァインの評価は、マルクス主義及びとりわけソビエト同盟の歴史的な役割に対する評価の違いから、かなり険しく対立している。フーバーが宗教的社会主義という視点からライヒヴァインを扱ったのは、さすがに適切であると思う。 5.ライヒヴァインの社会思想とナチズムのそれとを明確に区別するためには、やはり両者に共通する用語、たとえば民族、全体社会、共同社会などについて、その意味内容の相違を分析的かつ綜合的に検討する必要があるが、これはやはり今後の課題としておくべきであろう。
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