研究概要 |
1 多肢選択問題が内臓する特性(欠点)として, これまで既に我々は正答ターミナルを見出し, 五肢の選択肢のうちたった2つだけで必ず正答できることや, 解答するのにブランクでもよい不用肢, その2つを難しくすれば答えられない禁止肢を見出し, さらに誤った情報によって得点は激しく低下することなどを発表してきたが, 今年度はそれらを総合的に見なおすことにより, あいまいな情報下でどのような結論に達するかということにまで思考を進めることができた. すなわち, これはファジー推論の基本的なルールを決定するものであることがわかった. 2 テスト後のkey validationには多くの方法があるが, その1つで最近医学教育方面で用いられるようになってきているEbel法について, その適用法の誤りを見出し, さらに正答ターミナルの考えを用いて正しい評価法を実施できる解決策を見出した. 3 多肢選択問題には正答できる過程がきまっており, 我々は正答ターミナルと名付けたが, このモデルを使用してパーソナルコンピューターにより得点分布を実力別にシミュレートした結果を発表した. これには当て推量による得点増加のほかに, 多肢選択問題の形式に由来する「連の効果」があり, しかもそれには正と負があることがわかった. これにより, 多肢選択問題による能力の評価は, 実力に比例しない部分が大きく現れてくることがわかった. 4 多肢選択問題は客観テストの中でも再認形式に属するもので, いわゆる○×テストにほかならない. 自分の言葉で表現しないため, 言葉を使う能力すらも低下し, 自分で考えて勉強する能力がなくなることがわかった. 5 当て推量の影響を学生の試験のときに検出する方法を考え, 現在データを集積中である.
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