研究概要 |
1.和田文治郎資料に関する研究のうち, 比較的保存状況の良好な「手書き原稿」と「謄写印刷原稿」から作業を開始し, ワードプロセッサーで整理された資料の一部が国立民族学博物館研究報告に公表された論文「アイヌのお産」(別記)の中で利用されている. 2.和田文治郎資料のうち, アイヌ語で記録されている調査ノートは, タイプライターで整理が進められた. 資料中には, アイヌ語の語形の解読不明なものや, 意味不明な単語が多数含まれているので, 樺太アイヌ出身者から聞き取り調査を試みたが, 有力なインフォーマントですでに死亡しているケースが多く, 又, 幸い生存者に遷遇した場合も, 神話, 祈りに含まれる古形のアイヌ語については, ほとんど有力な資料はえられなかった. しかし, 国立民族学博物館その他の研究施設での資料調査, 北方言語文化研究会(早稲田大学)等の研究会での情報交換から, 多くの解読用の有力な資料を入手することができた. 3.Pilsudski資料については, 従来から共同研究体制にあったポーランドのアダム・ミツキエヴィチ大学から, 言語学研究所長J.Banczerowski教授の来日が実現し(私費), 小樽商科大学でポーランド語で書かれた資料の整理が同氏の共用作業の結果大巾に進展をみることができた. その成果の一部は昭和63年度中に, 北海道大学の北方文化研究(19号)に掲載する予定である. 4.上記資料整理は, かなりの難問を含むとはいえ, 順調に進んでおり, 次年度以降も継続し, 順次成果を公表する予定である.
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