研究概要 |
昭和62年度の研究実績は, 以下に記す通りである. 1.寺社参詣曼茶羅図の所在情報については, 様々な機関及び研究者に問合わせて, その諸情報を整理し, データベース化しつつある. また, 大阪市立博物館編『寺社参詣曼茶羅』に収録されている参詣曼茶羅図については, その写真焼付等を行ない, 研究上の基礎史料とすることが出来た. 2.西国三十三カ所観音霊場寺院調査のために, 三度調査旅行を行ない, 清水寺参詣曼茶羅については, 中間報告としての論文を発表した. また, 西国第四番札所〓尾寺の参詣曼茶羅三点についての読解・分析・調査を行なったが, その結果は昭和63年中に研究誌に発表する予定である. 3.広く民間信仰・芸能民・被差別民関係の史料の所在情報を蒐集しており, 関連史料についてのデータベース化を試みつつある. 4.熊野観心十界曼茶羅図は, 参詣曼茶羅図と不可分な絵図であり, その読解・分析を進めた. その成果の一端は, 黒田が昭和63年1月の絵解き研究会において「熊野観心十界曼茶羅図を読む」と題して報告を行なった. その質疑討論で明らかになったことだが, 天台本覚思想等についての理解が必須であると思われたので, 民衆宗教関係を中心とした史料集・文献等を入手し, 今後の参詣曼茶羅図分析を内容的に深めることが可能になるように努めた. 5.熊野那智参詣曼茶羅図との比較による伊勢参詣曼茶羅図の分析・読解は現在作業を進め始めた段階である. 6.本年度の研究作業は, 更に続行しなければ成果としてまとめられない部分が多く, 次年度たる昭和63年度における現地調査・絵図カラー写真の入手・参詣曼茶羅図に関する諸情報のデータベース化を引続き推進したいと考えている. その成果のいくつかは, 論文として昭和63年度中に公表したいと思っている.
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