研究概要 |
1.東北の荘園は「郡郷」そのまゝ荘園化していると指摘されているにもかかわらず, 小田島・成島などと郡郷名をその名称としない荘園名がなぜ当初から出現するのか. この点, 幸い, 地字名に荘園名と同じところが遺っているのを手掛りに現地調査をしてみると, そこには政所遺溝と覚ぼしきものが残り, さらに, 領家によって勧請された神社が(それも複数残す例が多い)今日に伝えられていることが判った. 即ち, 荘園名は, 政所の置かれた地字名に拠るものであろう, 荘域については, 単に郡郷を継承するものというよりは, 境が川の流れや, 山の稜線およびその延長線に置かれていることよりして自然地形に拠っていたことが判るので, それをひとつの生活・行政区制にしていたことはさらに追究しなければならない課題をもつ. 2.「名」(みょう), 「保」(ほ)についても東北全般にわたってその所在を確かめ, その成立年代, 範囲, 成立事情を追求し, 「名」, 「保」等の中世所領の成立が, 東北においては, 荘園の成立時期と一致すること, にもかかわらず, 名称上に違いがあるにはなぜかを考えた. それは, 微税権主, 微税方法の違い-その法構造に拠ること, この点, 従来の研究成果とは異なった知見がえられた. 3.今後, 中世所領の個別的研究を歴史地理的研究によって推め, 東北における中世所領成立過程の特質をより明確にしていきたい. そのための確かな手掛りをえることができた.
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