研究概要 |
本年度は日本所在の清朝初期史料について, 満漢文〓案と碑文拓本を中心に「浦文庫」, 「内藤文庫」, 「狩野文庫」, 天理大学, 東洋文庫で概略調査を行うと共に『満文老〓』と『旧満洲〓』の照合に着手した. 既刊の各文庫, 図書館の蔵書目録には拓本や〓案が記載されていない場合もある. 1.碑文拓本 同時代史料として重視される拓本は, 現在の中国で戦災や都市開発のため多くの碑文が消失しているので, 1945年以前に拓され日本に将来し残存しているものは貴重である. 浦文庫所蔵の順治2年建立の満・蒙・漢蔵文「奏天四塔」拓本は, 順治年間建立の碑文が本来, 満文をもとに漢・蒙チベット文に翻訳された事, 当時, チベット文を西域文と称していた事などを伝える. 武功郡モリドゥン等を賢天祠に祭る事を命じた乾隆19年9月建立の満漢文「乾隆市宗〓諸〓鉱石顕彰上諭碑」によれば乾隆示談に至って〓金国建国に助力した太視力一族, 近親者に対する処遇が変化した事を『実録』等の公式記録を超えて明らかにし得る. 2.写本, 浦手写本『奏疏稿』は〓陽故宮旧蔵の原写本の所在が不明で, わずかに明治時代以後に日本に将来された筆写本2種が知られるのみである. 清初の一等史料である『奏疏稿』浦本は, 今後に筆写本を相互に照合してテキスト作成するために, 貴重な存在である. 3.「満洲〓人系譜」これに関する〓案は浦文庫, 内藤文庫, 東洋文庫, 大本文庫等にあり, その中には同系列の〓案を推定されるものもある. 各図書館に分散する「〓図」, 「勅書」, 「世褒〓案」等の系譜を統合して, 族的, 時代的連続性を明らかにする必要がある. 今年度調査した拓本, 筆写本, 〓案を次年度以後に継続調査すると共に, 調査結果をコンピュータ処理して, 諸資料の系統を整理した「所在目録」を作製したい.
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