本年度は日本存在の清朝初期史料について、満漢文档案と碑文拓本を中心に江戸時代の中国文化流入の窓口となった「長崎県立図書館」、「福岡県立図書館」、「壱岐郷土館」、「対馬郷土館」など九州地方の〓所蔵機関概略調査、及び東洋文庫を中心に個々の資料を具体的に調査した。これに併せて、昨年度及び今年度に収集した資料を既に出版されている清初資料集との照合のための整理、昨年度に引き続き『満文老档』と『旧満洲档』の照合を行なった。 1.碑文拓本。昨年度に浦文庫で収集整理した瀋陽(旧奉天)所在の拓本、及び内藤湖南が明治末年に撮影した一部の碑文文面を含む碑文の建立状況の写真を整理し、これを1988年度の遼寧省、吉林省調査に持参して、清朝末年に於ける史跡と碑文が現在どの様に変化しているかを写真記録し、ほぼ90年後の現状を明らかにした。 2.写本。長崎県立図書館の『清文鑑和解』と『飜譯満語纂編』は満洲文字でかかれた満洲語にカナで音価を記しそれに日本語訳をふした「満洲語日本語対訳辞書」である。前者は清朝の『清文鑑』の日本語訳で、後者は『清文鑑』を基礎にして当時(嘉永4年)の満洲語を採集して訳語を付している。満洲語辞書は中国でも数少ないので、満洲語の語彙としても貴重であり、これを通じて中国文化の日本流入の状況、江戸時代の清朝、東北アジアに対する知識が知ることができる。 昨年、今年度調査した各図書館の拓本、筆写本、档案を満洲語資料を中心にして整理し、調査結果をコンピュータ処理し、諸資料の系統を整理した「資料所在目録」を作成したい。
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