研究概要 |
19世紀後半における東アジア諸民族の自己意識と国際意識の特質を解明するための予備作業として、前年度の越南問題・清仏戦争に続いて、平成元年度においては、主として朝鮮問題をめぐる清国当局・知識人・ジャ-ナリズムの対応と動向に焦点をあて、関連文献・資料を購入・収集し、分析・検討を試みるとともに、本研究全体のまとめを行った。清末ジャ-ナリズムの朝鮮問題をめぐる論点は多岐にわたるが、ここではとりあえず次の三点について確認する。 I.朝鮮の内外製作について。1870年代の初頭から朝鮮の動向に注目しつつあった清国のジャ-ナリズムは,琉球処分の衝撃を受けて海防強化に乗り出した朝鮮当局を声援し、鎖国の不可能な情勢のもとでは成見を破り防務に精励すべきこと、欧米列強とも積極的な通商製作を展開すべきこと、旧来の風俗・習慣を改革すべきことなどを勧告するとともに、壬午事変・甲申政変については開化党や守旧党の党争を批判し、内乱鎮圧製作を支持している。 II.朝鮮・日本関係について。日本国内の征韓論に注目しつつ、江華島事件後に朝鮮の対日強硬姿勢を支持するが、1880年代に入るとロシアの侵略に対する警戒心と日清提携論の立場に規定されて、朝鮮の対日断交論を愚策として批判し、朝鮮・日本関係の維持・緊密化を主張するようになる(例えば、黄遵憲の朝鮮・日本・清国・米国四国同盟論支持)。 III.朝鮮・清国関係について。宗属関係護持論の立場から,清国が壬午・甲申の内乱に積極的に介入することを当然の義務として主張しつつも、他方では儒教的君臣父子の道徳律に拘われて大院君の誘獲を批判する。とはいえ、伝統的な宗属関係重視の見地よりも,植民地的支配への再編を志向する見地を強調しはじめるところに、1880年代以後の清国ジャ-ナリズムの新傾向を確認することができる。
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