17-19世紀における中国船の漂着資料を日本、中国、朝鮮資料に求め収集した結果、本年度は次の研究成果をもとめることができた。 清代の海上貿易史において最も活躍した地域の一つが福建省である。同省における海船経営を取り上げ、海船の活動海行、経営構造、船舶等の問題について考察した。その結果、福建の海船は中国大陸沿岸のみならず日本、フィリピン、インドネシア等の国々まで進出していたことを明らかにすることが出来た(「清代福建の海船業について」『東洋研究』47巻3号)。 清代の海船自体の活動以外に、船舶に乗船し遠隔地商業に従事した商人群の一端が、中国船の漂着資料により知られる。彼らの商業活動は沿海船を利用して中国大陸の広範囲の沿海地域に及んでいたことを明らかにすることが出来た(「清代客商と遠隔地商業-乾隆十四年の海難資料を中心に-」、『関西大学東西学術研究所紀要』第22輯掲載予定)。 高知県立図書館高知市民図書館等の調査により、中国浙江省にあった対日貿易の基地乍浦より長崎貿易に向かっていた貿易船安利が寛政元年(1789)12月に高知県の海岸に漂着している。この船の漂着時より長崎へ送還されるまでの記録は、中国の海外貿易船の実態を明らかにしてくれる。その資料を影印し、内容考察を行った解題を付し公刊する予定である(『寛政元年土佐漂着安利船資料』、関西大学出版部」。さらに、中国長江河口の崇明島の商船が、山東半島の港へ交易に行く途上漂流し、文化五年(1808)高知県の室戸岬の近くに漂着している。この船の漂着時より長崎送還までの記録は、江南の沿海商船の経営の状況を知る上で貴重である。そこで、この資料と内容考察を加えた解題を付し公刊する予定である(『文化五年土佐漂着江南商船郁長發資料』、関西大学出版部)。
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