昭和62年度より平成元年度までの3ケ年にわたって研究費の補助を受け、17ー19世紀における中国船の朝鮮半島、日本列島、琉球諸島等に漂着した資料の収集によって清代の海上貿易史に関する研究を行った。 17世紀より19世紀にわたる時期の中国の海上貿易史を研究するに際して、中国側資料を活用するのが最善の方法と考えられる。しかし、その全貌を解明するために十分な残存資料は極めて少ないと言える。そこで、注目されるのが、中国船の海上活動の活発化に伴い、海難に遭遇した船舶に関する資料である。 中国船の漂着資料は朝鮮半島、日本列島、琉球諸島等に特に多く残され、それらの資料の分析から、清代中国帆船の活動領域は、中国大陸・朝鮮半島・日本列島・琉球諸島・台湾・フィリピン群島・インドネシア群島・マレ-半島・インドシナ大陸等に囲まれた渤海・黄海・東シナ海・南シナ海等の全海域に及んでいたことが知られる。 主要海域の一つに、中国大陸の沿海海域があり、東北地域、江南地域、華南地域を結ぶ通商、交通路の発展に中国船は多大の寄与を行った。とりわけ、漂着資料から中国沿海船の活動は、中国大陸各港を結ぶ役割のみならず、その舶載すべき生産物等、各地の産業に活性化を与え、その影響は沿海地区のみならず、大陸内部にまで浸透していた。 華南地域に位置する福建省の船舶は沿海地域のみならず、海外にも積極的に進出し、日本・フィリピン・インドネシア等と海外貿易を盛んに行った。 19世紀後半までの上記の海域で広範な活動海域を保有していたのは中国船であったと言える。以上が研究成果の概要である。
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