本研究の中心課題にそくしていえば、前年度に引続いて聖職者官僚のみならず俗人官僚についても同時並行的に基礎カ-ドの作成作業を継続し、俗人官僚については作業が遅れているものの、聖職者官僚については予定の水準を超えた。しかし最終年度においても、聖職者から俗人への比重の移動については、当初予定の論稿を集約する段階までにはいたらなかった。 最終年度の具体的な成果としては、裏面に記載の4点の論文を発表したことがあげられる。そのうち(5)(6)(7)の3点はいずれも副題に明記の通り“J.H.デントンの所説に関する覚書"でである。何故デントンの所説が問題になるか。その点については前年度の“実績報告書"に記載しているので、ここでは反復しない。 さらに最終年度においては(8)「イングランドの“司教補佐"--1300年から1541年まで(上)」を発表した。この3年間の主要な研究対象は、既発表の論稿に限定していえばア)ロンドン聖マルティヌス大聖堂イ)王立自由礼拝所ウ)司教補佐の3年になる。これらが当初の研究課題とどのように関連するかは、別に「研究成果報告書」で詳細に述べた。要点だけを反復するならば、これらの論稿はいずれも聖職者官僚の存立基盤の実態検証を意図したもので、聖職者官僚から俗人官僚への“比重の移動"については、今後あらためて広範な視野から挑戦したい。 なお今回の交付金によって所属機関における関係史料の整備が一段と進行し、広範な視野からの再挑戦の可能性が拡大したことを追記しておきたい。
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