研究概要 |
ポピュリスト反「独占」論の歴史的起源は, アメリカ独立革命期以来の「共和主義」, さらには, ヨーロッパ中世末から近代初頭にかけての民衆的「モラル・エコノミー」観念にあるのではないかとの仮説に立ちつつ研究を進めた結果, 私は, この仮説の妥当性を確信するに至った. その根拠は, もちろん, 私自身の研究の深まりにもよるが, 一方では同様の関心を有する研究者が私と同じような結論に到達したことにもある. その好例が, ポピュリスト思想研究の第一人者ノーマン・ポラック(Norman Pollack)によるThe Just Polity(1987年出版)の刊行と, その中に示された結論である. 彼は, ポピュリストの経済体制論を「民主的資本主義」論と性格付け, それは, 私有財産所有, コミュニティ, 全般的福祉の三つを組み合わせたきわめて「アメリカ」的なものであるとした. しかして, 彼によれば, ポピュリズムとは小財産所有者の資本主義修正を求める運動と思想ということになる. このことが確定される前に, 19世紀末において最大の問題であるはずの土地の独占(逆の面からみれば, 小作問題)が運動の中でどのように扱われたかについて検証することが不可欠である. 拙稿「ノーマン・ポラックのポピュリズム思想像」においては, このことを課題として指摘した. そのうえで, 私は現在, 自らこの課題に取り組むべく, カンザス州中部のマリオン郡における小作農民の実態と, 彼らと農民運動(とりわけ, 農民同盟やポピュリズム)との関わり方の解明を急いでいる. この成果は近く, 「ポピュリズムと小作農民(仮題)」として学術雑誌に発表の予定である.
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