研究概要 |
1918年11月のドイツ革命の勃発にあたり, ドイツ大洋艦隊の叛乱がその直接的契機となったことは, よく知られた事実である. 本研究では, この叛乱を担った水兵の意識と海軍指導部の対応を考察の主たる対象とした. そこでまで, 本年度の研究実施計画に従がい, 1917年夏の第一回目の叛乱の原因と経過に注目した. この研究成果については, 『西洋史学『(147号)発表したが, 叛乱の原因については, 水兵の「革命的」意識を問題とすることはできず, 大戦間の大洋艦隊の置かれた特殊な状況, またそこから派生した海軍内のさまざまな弊害こそを問題にしなければならないとの結論を得た. さらに, この叛乱鎮圧にあたって, 将兵間の潜在的対立関係が克服されなかった点に, 18年の叛乱の原因があったのではないかと指摘をした. 次いで, 18年10月末の二回目の叛乱も, 基本的には平和を欲する兵と戦争継続を主張する将校との対立の結果と捉えることができるとの結論を得た. つまり, 水兵の叛乱は国家大成の転覆を図ったものではなく, いわば自然発生的な平和への願望に由来するものであって, ここでも水兵の「革命的」意識は問題とはならないのである. (この点については, 昭和63年5月の「軍事史学会」において発表の予定である. ) 最後に, 革命期に成立した「水兵評議会」が革命の進展とともにどのような立場の変化を示すのか, この点については結論を得ることができなかった. 本年度購入した史料の検討を通し, また陸軍との比較も試みながら, その変遷の過程を跡づけてみたい.
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