研究概要 |
所期の研究計画の要点は, フランス啓蒙思想とレシチンスキとの関連, レシチンスキの著作活動のポーランドへの移植過程, フランス啓蒙思想のポーランドへの波及過程を掘り下げ, 実証的分析をなし, その媒介者と経過を検討することにあった. これに関しては, 申請時に執筆中の論文「フランス啓蒙思想とレシチンスキの役割」『史林』70-2(1987)でその前提的作業に着手していた面もあり, これに立脚して「コナルスキにみる先駆的ポーランド啓蒙思想家像」『東欧史研究』10(1987)により, 以下のように研究計画のより一層の深化をなす機会に恵まれた. フランス啓蒙思想の形成におけるレシチンスキの決定的役割を踏まえ, その成果をポーランドに媒介した人物に, レシチンスキの側近として活躍したコナルスキが抽出できただけではない. その経過に関してはポーランド継承戦争からコナルスキの著作『〓会の効果的運営』(ワルシャワ,1760-63)刊行時が該当し, ポーランド啓蒙思想の成立過程におけるコナルスキの先駆的役割を跡付けることもできた. その際, コナルスキの著作活動のみではなく, その教育革命事業家としての社会的実践活動をも充分に考察できる機会を得て, 彼の先駆的役割を当時の文化的外圧下の国民的覚醒という視点で把握することができ, フランス亡命中のレシチンスキとコナルスキの人間関係が本研究計画の基軸になりうる背景を明確にすることができた. したがって, 今後の課題としては予定通りポーランド国民教育委員会(1773年創設)活動のコナルスキの貢献, 啓蒙君主ポニャトフスキ統治初期における国制改革, 国民文化の成立過程を総括することとしたい. 予定通り, フリーメーソン流入下のワルシャワ在住シェラフタ, 都市民, ユダヤ人の諸動向を調査するのはいうまでもない.
|