研究概要 |
1:北海道大学構内サクシュコトニ川遺跡出土西暦9世紀代の植物炭化種子20万粒の同定作業を5月から実施. 走査電子顕微鏡を使用してアワ・キビ・ムギが多数存在していたことを確認した. しかし, 予想されていたヒエは存在しなかったことが判明. これを確かめるために, 苫前郡苫前膜香川6遺跡の擦文時代集落で採集された土壌サンプルを処理, 同様の所見を得た. 2:南茅部郡南茅部町臼尻の縄文時代中期後半の遺跡で竪穴住居中から採取された土壌の処理を行ない, その中に確実なアワ・ヒエの存在していたことを確認. これは縄文時代中期に雑穀が存在していたことを日本で初めて確認したことになる. 3:北海道各地で行なわれている行政発掘の現状から良好なサンプルを集めて, 走査電子顕微鏡で栽培植物の検出作業を実施した. この結果, 擦文時代にはキビが優勢, アワ・ムギがこれにつぎ, わずかではあるがエゴマらしきものの存在が判明した. 4:以上の調査から, 北海道の先史時代の農耕活動以外に古く, 縄文時代前・中期に開始された可能性が考えられるようになり, 擦文時代(9世紀〜12世紀)においてはオホツク海岸沿いを除きほぼ農耕主体の生活基盤を持っていたことが推定できるようになった. 5:走査電子顕微鏡を種子同定に利用する場合, どのようなプロセスで実施するのがもっとも効果的であるのか実験した. また, 現生植物の種子を集めて撮影し, マニュアル作成の容易を始めることができた. 6:遺物の使用痕を走査電子顕微鏡で撮影するためにレプリカ法がもっとも効率的であることを確認した.
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