研究概要 |
本研究は我国ではほとんど行なわれたことのない分野であるため, 基礎的資料の収集が第1の課題であった. この目的のため下記の鉱山跡を訪れ, 関係機関や個人によって保管されている石臼類の詳細な観察, 記録, 実測, 写真撮影を行なった. 山梨県黒川金山, 岐阜県神岡鉱山, 富山県松倉金山, 石川県宝達金山, 福井県大野鉱山, 兵庫県生野銀山, 静岡県阿倍金山, 土肥金山, 大仁金山, 縄地金山. 製作した実測図は資料の発表に備えて整理・清書した. 以上の研究の結果, 日本の中近世鉱山で鉱石の粉砕に使用された石製工具類の概要が把握され, 個々の鉱山の事例について詳細な特徴が認識された. また, とくに綿密な調査を行なった黒川金山では, 鉱石の荒割から微粉砕に至る工程が解明されたことは大きな成果である. さらにできるだけ資料を増やし, 年代と技術系統の流れに沿ってそれを位置づけることが来年度の課題である.
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