研究概要 |
初年度にあたる62年度には, まずデータの収集につとめ, いくつかの研究成果を得ることができた. 1 日本各地での青銅器製作の具体的なあり方を探るために, 発掘調査報告書や論文などから, 資料データを抽出し, 必要に応じてコピーをとった. また図版の重要なものは, 写真複写を行なった. 今年度で, 西日本の資料をほぼ収集できたので, 来年度は朝鮮, 中国を中心に資料を収集する. 2 東京, 京都, 九州の各研究機関で所蔵する鋳型資料を検討した. その結果日本の鋳型には, 砂岩を使った例が多いことが判明した. 朝鮮や中国の鋳型は, 滑石や片麻岩などよりきめの細かい石材を用いている. この材質の相違は, 何を示すものか, 来年度の追求課題である. そのほかに土製鋳型も出土している. しかし日本の例は, 中国の土製鋳型に比べると, 技術的に低い段階の惣型技法にとどまっている. 朝鮮では土製鋳型が未発見のために, 鋳型どうしで直接比較することが出来ない. そこで鋳造した青銅製品を観察して, 比較検討する必要がある. 63年度は, これをすすめてゆく. 3 日本各地出土の鋳型や青銅製品について, 実測や計量, 写真撮影などを進めている. しかし資料が各地に分散し, しかも展示中などの理由でスムーズに調査を行ない難い場合がある. 今年度は, 銅戈鋳型など数点の調査にとどまっているので, 来年度以降に作業が残されている. 4 収集したデータをもとに, 弥生時代の青銅器受容の実態を分析した. その結果, 弥生前期初は少なく, 前期末に急激に増加する. ところが弥生開始と共に, 鉄器が導入されていることが, 福岡県曲田例などから明らかになった. 日本では, 鉄と銅とが一緒に入ってきたことになる. つまり日本では青銅器時代が欠落する点が明白になった. この特殊な金属器のあり方は来年度の重要な追求課題である.
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